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クモキチ

わが家では部屋の中にクモがいたら、退治しないで一緒に住んでもらうことにしている。
12年前から何回か引越しをしながら色々な部屋に住んでいるが、それぞれの家に必ずクモの同居人がいた。

 

私たちは同居人のクモ(クモ達の時もある)のことを、

「クモキチ」

と親しみを込めて呼んでいる。

 

クモキチを部屋の中で見つけると、
「コバエとか、虫をたくさん食べて大きくなるんだよ。よろしくね。」
と心の中でお願いする。

実際には、
「おかげさまで、もりもり食べてマッチョになりました。
結婚して子供を作りましたよ、一族郎党よろしくお願いします!」
と言われてと困るな、とは思う。

ちょうどいい大きさで、適度に元気なクモキチでいてほしいと自分勝手な気持ちでいる。

 

今年の3月に引越しをして今の家に住んでから、
この家の「クモキチたち」と初めて顔を合わせた。

 

1匹のクモキチは、足がピアノ線より細くて体が丸くて小さい。よく見ないとクモキチがいることが認識できない。

いつも窓の外の柵にぶら下がって風に揺られている。その姿はあまりたのもしく見えないけど、いい奴そうだな、と見かけるたびに思う。

 

もう1匹のクモキチは、トイレにいる。
足は水色で長くて、おなかがぷっくりして黄色い。

こっちのクモキチはおくびょうで、私が掃除したりしていると、
「ワーッ!!」と驚いて、落っこちる。

私も「ワーッ!!」とびっくりする。

クモキチは怖がりながらおしりについた糸にぶら下がってブンブン揺れている。

私は「なんだ、クモキチか。」とホッとする。

換気扇の電源コードが定位置のクモキチに
「そこにいられると、ジャマなんだけど……」と文句を言う。

クモキチは今のところどいてくれる気配はない。